韓国環境教育大会から考える、日本の環境教育の未来
韓国全土の17地域から231名の環境教育活動家や環境教育士が集まったKEEN(韓国環境教育ネットワーク)の大会が開催されました。KEENは2005年に発足し、韓国における環境教育の普及と情報交流を推進してきました。しかし近年、韓国政府の教育行政の弱体化により、環境教育推進に関する予算の削減などが懸念されています。
持続可能な生態文明に向けた変革的環境教育宣言(案)
こうした状況を受け、今回の大会では「持続可能な生態文明に向けた変革的環境教育宣言(案)」が発表され、閉会式で正式採択される予定となっています。この宣言案には、以下の4つの主要提案が含まれています。

- 協力の推進と変革的教育実践の強化
- 環境教育をより変革的にするため、広範な協力体制を構築します。
- 環境学習の権利保障と政策の強化
- 環境学習の権利を政府に求め、環境教育施設登録制度の導入、環境教育士の公的配置、学校での環境教育必修科目の拡大などを提案します。
- 環境教育の自律性確保と支援拡充
- コロナ禍で停滞した環境教育事業に対し、人的・財政的支援を拡充し、長期計画を策定します。
- 第4次全国環境教育マスタープラン(2026年)に向けた提案
- 気候・環境教育推進機構の設立、環境教育基金の創設、多様な関係者が参加する協議会の設立を進めます。
また、大会中には様々なワークショップや展示も行われました。例えば、海洋ごみを活用したアクセサリー作りや、ボードゲーム・カードゲームを活用した教育用教材の展示などが来場者の関心を集めていました。さらに、教育実践発表会では、環境に配慮した教具作りや、地域の環境問題を観察する重要性が強調されました。






日本における環境教育の場づくりの必要性
このような韓国の現状は、日本の環境教育にも多くの示唆を与えてくれます。環境教育は単なる知識の伝達ではなく、実践を通じた学びの場を提供することが求められています。しかし、日本においても、環境教育の推進には制度的な課題や、教育現場と実践者の連携の難しさが指摘されています。
こうした背景を踏まえ、都留文科大学では、環境教育の実践と研究が交わる場を創出する試みとして「つる環境教育マルシェ」を企画しました。このマルシェでは、大学生や実践者が環境教育に関する研究や実践を発表し、意見交換を行うことで、新たな学びの場を生み出すことを目指しています。韓国の動向を参考にしながら、日本における環境教育の発展をどのように進めていくかを考える機会として、このマルシェが都留市及びその周辺地域の環境教育推進に重要な役割を果たせるよう努めていきます。
本調査は、科研費21K13592「湿地を生かした地域・自治体づくりとESDをテーマとした研究」の助成を受けて実施しました。今後も湿地を通じた地域活性化や環境教育に貢献できるよう、研究を進めてまいります。