
6月21日、日本環境教育学会中部支部大会が名古屋(藤前干潟)で開催されました。対面参加は25名、うち支部会員は約10名で、他は一般参加者。さらにオンラインでは約10名が視聴しており、「藤前干潟」の保全と活用に対する関心の高さを感じる機会となりました。
今回の大会では、ラムサール条約登録湿地である藤前干潟を軸に、保全とワイズユース(賢明な利用)、都市計画や環境教育のあり方に至るまで、幅広くかつ本質的な議論が印象的です。基調講演では、中部大学の福井弘道先生より、「藤前干潟から流域・地域循環共生圏へ ―― 人と自然のウェルビーイング」と題し、環境アセスメントにおける市民参加の意義が語られました。
パネルディスカッションには、名古屋市環境局、藤前ユース、研究者が登壇。未来志向の環境教育の可能性について、多角的な視点から意見が交わされました。なお、当日の内容は今後、報告書として取りまとめ、発表をしたいと思います。
なお、私自身も、有賀宏道先生との共同研究として、長野県内の教科書におけるラムサール条約の掲載状況調査と、昨年度実施した授業実践を報告しました。詳細は、こちら



現地の学び:ユースのまなざしと未来
翌日22日には、藤前ユースによる「干潟体感学習」に参加しました。この日は潮位が高く、腰まで水につかりながらの活動となりましたが、ソトオリガイやウロハゼといった干潟の生き物たちと出会うことで、まさに【五感】で学ぶ時間になりました。
学習後の振り返り会で印象的だったのは、藤前ユースの皆さんが語る活動への想いと、これからの展望です。未来の保全やワイズユースを担う若者たちの姿は、とても頼もしく、希望にあふれていました。






湿地を守る、とは
今回特に心に残ったのは、守る会の亀井さんとユースの岸さんの存在です。
亀井さんは、長年藤前干潟を守ってきた「守る会」の伝統を体現する方。自然保護運動の原点ともいえる強い信念を持ちつつ、その経験と知恵を次世代にどう手渡していくかを模索されています。
一方、ユースの岸さんらは、まさに「これからの保全」をリードしていく存在です。名古屋市とも連携しながら、若い感性で新しい取り組みを展開していきそうな雰囲気があります。
異なる立場、異なる世代。しかし、それぞれの視点が交わることで、藤前干潟は単なる「保全の対象」から、共につくる未来の場へと変わっていくのかもしれません。「湿地を守る」とは、ただ手を加えずに残すことではなく、人と自然との新たな関係性を育てることなのだと思います。藤前干潟には、そのための知恵と人とまなざしがそろっていたと、強く実感した2日間でした。
本調査は、科研費25K17003「持続可能な地域を支える教科等間の連携を図る湿地教育の開発と実践」の助成を受けて実施しました。今後も湿地を通じた地域活性化や環境教育に貢献できるよう、研究を進めてまいります。